タイトルロゴ大山祐史の経営コラム

 


   <本日のツボ241>
    『境界がなくなる』

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<ツボの説明>

  某都市銀行のインターネットバンキングサービスを理用している
 のですが、非っ常ーに便利です。

  何しろ、家や会社のパソコンから残高確認や振込み・振替え、
 はては投資信託の売買や宝くじの購入までできてしまうのです。

  その上特別なコストは一切かからず、振込み手数料などは窓口や
 ATMより安いケースもあるのですから、使わない手はありません。


  「顧客囲い込み戦略」の一環といってしまえばそれまでですが、
 銀行の利便性について考えたとき、むかし講演で話したこんなネタ
 を思い出しました。それは次のような話しでした。

  Y2K(西暦2000年)問題が盛んに取りざたされていた、
 1999年のことです。業務システムと2000年問題について
 話していて、ちょっと脱線したときの一節。

  「公共料金を銀行窓口で支払おうとすると、何分間か待たされた
 あげくにカウンターに呼び出され、そこで伝票と現金を渡して支払
 処理を済ませ、検印をもらうまでまたしばらく待たされる。

  一方、コンビニで支払うときには、レジに伝票と現金を持って
 行き、バーコードリーダーで「ピッ」と読み込んでもらうだけで
 完了。ほとんど1分とかからずに終わる。

  片や年収何百万円かの女子銀行員とその後ろに控えるもっと高給
 のおじさん行員がやっている仕事。コンビニでは時給7〜800円
 くらいのお姉さんかお兄さんが一人で処理している。

  その上銀行業界の偉いさんは「公共料金の収受業務は手数料が
 安くて採算割れである」として取り組む姿勢は超後ろ向き。一方
 某コンビニ社長は「公共料金収受は追加コストの負担なしで大き
 な手数料収入が得られるおいしい仕事。お支払はぜひコンビニで」
 との見解を示した。

  この差はなんだろうか? 公共料金収受という仕事にかかって
 いるコストの差は、おそらく数十倍に達しているのではないか。
 この差がすなわち業務効率の差である。もっと具体的に言うと、
 人間とシステムの使い方の合理性の差ということ。このままでは
 日本の銀行は国際競争に生き残ることはできないだろう。」


  あれから7年、日本の銀行はずいぶん変わりました。数はだいぶ
 少なくなってしまいましたけれど、ちゃんと生き残っています。

  一番変わったのは、コンピューターシステムを手前勝手な理念で
 作るのではなく、顧客利便性を意識したものに作り変えていった
 ことです。想像ですが、そのために銀行員の方たちの負担が増加
 している部分があるのではないかと思います。


  冒頭に書いたように、従来(というか昔は)「ホームページ閲覧」
 という情報収集用途で用いられていたWebというシステムが、
 現在では銀行決済などにも使われるようになってきています。

  ビジネスの表層に沿って発展してきた技術が、少しずつその内部
 へ浸透してきたかたちです。

  この表層と内部との境界は、今後ますます不明確になり、Web
 ブラウザ(ホームページ閲覧ソフト)と業務アプリケーションの
 一体化が進んでゆくでしょう。

  会計システムや販売・在庫管理システムといった関係性(リレー
 ショナル)データベースを用いる業務システムは、インターフェー
 ス(使う側の人間との接点)の部分ではWebブラウザを用いる
 ような形のものになってくる可能性が高いです。

  より卑近な例で言えば、エクセルやワード、パワーポイントなど
 のような汎用業務ソフトも、統合されたりブラウザ上で動くもの
 として提供されるようになることが考えられます。


  中小企業にとってもコンピューターシステムは必須のツールと
 なっています。

  「コンピューターは苦手」という方でも、Web技術と業務シス
 テムの関係がどのように進化してゆくかをおおまかに見ておけば、
 自社システムの方向性の決定において大きく的をはずすことには
 ならないと思われます。

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 アドバンマネジ経営コラム by 大山祐史


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