タイトルロゴ大山祐史の経営コラム

 


   <本日のツボ274>
     『価格感受性』

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<ツボの説明>

  生活必需品は少しでも安いものを探して買うけれど、趣味に関
 するものについてはそれほど価格を気にすることはない などと
 いうことはありませんか?

  毎日のランチを選ぶ際には、百円、二百円の価格差が結構気に
 なりますが、恋人とデートするときの食事では数百円程度の差で
 逡巡するということはあまりないのが普通です。

  どれくらいの価格差に反応するかは人それぞれですが、誰もが
 心の中に「価格感受性」というものを持っていて、それを基準に
 「高い」とか「安い」ということを感じるようになっています。

  この価格感受性にもとづく「高い」「安い」の判定が、「買う」
 か「買わない」かという判断をする際の重要な基準になっている
 ことは言うまでもありません。


  実はこの「価格感受性」、一人の人間の中でも一様では有りません。

  「ボーナスをもらった直後はサイフの紐が緩む」などということ
 はそのわかりやすい例であり、昔から「ボーナス商戦」などと呼ば
 れるものが存在するのは、「価格感受性」のゆらぎをマーケティン
 グに結び付けている事例と言うことができます。


  もう一つ、マーケティングの視点から活用してゆきたいゆらぎが
 あります。それは、心理的予算配分による価格感受性のゆらぎです。

  心理的予算配分とは、家計の可処分所得の使途を心の中で予算と
 していくつかの費目に割り当てることです。

  よほどお金にルーズな人でない限り、ある程度はこの予算配分を
 行なっていると思われます。たとえば、可処分所得40万円のうち、
 生活費として25万円、ローンの返済に7万円、残りの8万円が
 その他自由費用 などと言った具合に、心の中でお金の使途を振り
 分けているものです。

  問題は、自分の商品がその中のどの費目から支出される商品で
 あるかという点です。同じ人間の心の中であっても、費目によって
 価格感受性に違いが生じているからです。

  具体的に言うと、生活費の中から支出されるものについては、
 それに対する価格感受性は敏感になりがちです。「1円でも安い
 買物をするべくスーパーのハシゴをする」などといった行為は、
 一般的に生活必需品の購買時にみられるものです。

  一方、その他自由費として使われるものは、価格感受性がそれ
 ほど高くなりません。「衝動買い」や「たまにはちょっと贅沢を」
 といった支出は、その他自由費の中から支出されているのです。


  マーケターはこの価格感受性の違いに着目します。

  たとえば、同じ「石鹸」という商品を考えた場合、その商品を
 投入する市場が「一般の生活用品市場」だとすると、生活費からの
 支出となりますので価格感受性は高くなります。これは、価格競争
 になり易いということを意味します。

  投入する市場が「美肌用品」の市場ならどうなるでしょうか?
 「お肌のうるおいを保ち、肌年齢を若返らせる」という目的で購入
 される石鹸は、その他自由費からの支出で買われることになります。
  TVショッピングで見かける1個3000円〜5000円もするような石鹸
 は、生活費で購入されることはないのです。


  同じ商品であっても、それを投入する市場を「生活費支出による
 市場」と「その他自由費で賄われる市場」とに分けて、どちらに
 どの様に投入してゆくかを考えることが必要です。
  市場によって価格戦略が大きく異なります。


  同一商品で両方の市場を狙う というのも有りです。

  現在の市場がどちらであるのかを見極めた上で、もう一方にも
 進出する方法を考え出せれば、効率よく売上アップを実現する
 手段となります。

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 アドバンマネジ経営コラム by 大山祐史


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