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  2006年3月12日


 <本日のツボ56>
   『心の健康への関与』

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<ツボの説明>

  「電通事件」が結審してからまもなく丸6年が経過します。

 電通事件とは、広告代理店に勤務する一サラリーマンの自殺と、
 その原因をめぐって、会社に損害賠償を求める遺族と、会社に
 責任は無いとする会社が争った裁判のことです。

  最高裁まで争われた裁判は平成12年3月24日に結審し、
 結局会社側が敗訴。

  この判決により東京高裁に差し戻された審理は、直後に高裁よ
 り和解勧告がなされ、会社側はそれに従って和解案を提出。結局
 同年6月には遺族側との和解が成立しました。

  和解と言ってもその内容は、遺族側の全面勝訴に等しい内容で
 あり、会社側が最終的に支払った損害賠償金の総額は、
 約1億6千8百万円です。


  この金額が命のねだんとして高いか安いかはともかくとして、
 労働者の過労自殺事案に対して最高裁が初めて示した判決であり、
 その内容が全面的に会社側の責任を指摘したものであったために
 労働裁判史上画期的であると評価され、また産業界に大きな衝撃
 を与えるものとなったのです。


  この判決はまた、過酷な長時間労働→うつ病→自殺 という因
 果関係の存在を示唆しており、このことはすなわち「仕事のさせ
 方次第で労働者を死に追いやることがあり、その場合その責任は
 100%使用者側にある」と認定されたことを意味しています。

  さらに「使用者は、その雇用する労働者に従事させる業務を定
 めてこれを管理するに際し、業務の遂行に伴う疲労や心理的負荷
 等が過度に蓄積して労働者の心身の健康を損なうことがないよう
 注意する義務を負うと解するのが相当であり、使用者に代わって
 労働者に対し業務上の指揮監督を行う権限を有する者は、使用者
 の右注意義務の内容に従って、その権限を行使すべきである」と、
 会社及び管理監督者(上司)の「労働者に対する心身の健康配慮
 義務」にも言及しています。


  いまや「うつ病」は20〜30人に一人はかかったことがある
 とされているほど、ごくありふれた病気です。

  そして「自殺者」の多くは「うつ病」に罹患した状態で突発的
 に死を選んでしまっているといわれています。


  平成13年:31,042人
  平成14年:32,143人
  平成15年:34,427人
  平成16年:32,325人

 これが何の数字かわかりますか?

 わが国における、1年間の「自殺者」の数です。
 交通事故死亡者数の3倍以上。


  あなたの会社が組織として効率よく業績を上げ続け、突然大切
 な仲間を失ったりするような悲劇を防止するためには、交通事故
 や機械による事故を防止するために安全教育を行うのと同じくら
 いか、またはそれ以上に、「労働者の心の健康」に関する認識と
 取り組みを強化する必要があります。

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 アドバンマネジ経営コラム by 大山祐史


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