<本日のツボ224>
『安心感・緊張感』
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<ツボの説明>
保険会社というのは「安心感」を売る商売。
「T電力」というわが国有数の巨大企業では、保有する数千台の
社用車に、任意保険を一切掛けていない。安心感は買っていない。
万が一社用車が事故を起こした場合、人身事故を含めてその損害
賠償金はすべて会社が負担することになる。
相手によっては損害賠償金額が億単位になることもあり得る現在
にあって、たいへんリスクの高いやり方に見える。
ところが実際には、多額の損害賠償が必要となるような事故は
ほとんど起こらず、任意の自動車保険料を払う必要がない分、毎年
数億円のコストダウンを達成しているという。
車両運行の安全管理を担当されている方の話によると、これを
達成するポイントは2つ。
1.運行前、運行後の車両点検の徹底
車両の始業点検はもとより、小さな擦り傷や汚れをも見
落とさない車両外観チェックが、毎日行なわれている。
これにより、どんなに些細な事故でも「報告書」として情報
化され共有される。「バンパーの角についた3センチほどの
擦り傷」も、そのキズができた経緯が周知されるということ。
2.保険にに入っていない事自体による効果
事故を起こしても、保険には入っていないため損害賠償は
会社が負担するということを社員が熟知している。その結果、
他のどんなことよりも「車両の安全運行」を最優先させると
いう意識が運転者の間に醸成されている。
これらにより、運転者が常に緊張感をもって車両運行にあたる
ことができる仕組みが機能しており、結果的に大きなコスト削減に
つながっているということである。
そういえば「T電力」の看板を背負った社用車が、危険な暴走
運転をしているところは、見たことがない。
他方、宅配業者のトラックやタクシーなどが、暴走したり実際に
事故を起こしているといった光景は、良く目にする。
こういった会社がどのような保険に入っているのかはわからないが、
保険契約の有無に関わらず、安全に対する緊張感を保つ工夫が見ら
れない会社というのは、ムダなコストの発生を避けることができない。
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アドバンマネジ経営コラム by 大山祐史
本コラムの内容は、大山祐史によるものであることを明記する
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