タイトルロゴ大山祐史の経営コラム

  2006年12月20日


   <本日のツボ254>
    『マーケティング不在じゃダメ』

-------------------------------------------------
<ツボの説明>

  昨日、鼻水が止まらなくなりノドも痛くなってきたので、近所の
 耳鼻咽喉科クリニックへ行ってきました。

  さすがにこの時期は混雑していて、お年寄りやサラリーマン風、
 小さなお子さんなど、様々な人が待合室にあふれていました。

  この時期とスギ花粉がひどくなる2月頃というのは、耳鼻咽喉科
 は繁忙期であり、いつ行ってもたくさんの患者さんがいます。
  個人クリニックで医師は一人だけですから、先生は一息入れる
 暇もなく診察に追われています。

  待合室には12席程度のソファーが置かれていますが、それが
 全部埋まってしまうことがあり、やってきて患者さんがその様子を
 見て、ガッカリした様子で引き返してしまうこともあります。


  鼻とノドを診てもらった後は、床屋へ行ってきました。

  平日の真昼間ということもあってかコチラはすいていて、ほとんど
 待ち時間ナシで今年最後の散髪を済ませることができました。

  理髪店というのは、基本的にウイークデーの日中は暇なところが
 多いようです。反対に、今のような師走の後半は、夕方や休日には
 お客さんがあふれてしまい、待ち時間が1時間以上などということ
 も珍しくなくなってしまいます。


  こういった現象は「需要の時期的集中」といって、どのような商売
 にも起り得る事態です。ただ、クリニックや床屋さんなどのサービス
 業の場合、提供する商品が「無形性」「非貯蔵性」「不可分性」(供給
 と消費が同時に行なわれ分割できないこと)「労働力依存(人手に頼
 ること)度が高い」といった特性を持っているため、製造業や流通業
 のように、暇なときに多めに仕込んでおいて在庫し、忙しくなったら
 その在庫を放出して売上を稼ぐ という対策は取れません。

  サービス業にとってはこの「需要の時期的集中」にどのように
 対応するかが、マーケティング上の大きな問題となるのです。


  たとえば、暇な時期に特別価格を設定することや、繁忙期に応援
 要員を雇って回転を上げるなどいったことがその対策となるのです
 が、こういった基本的なマーケティング施策が行なわれていない
 業種もまだまだ多く存在します。

  床屋さんの場合は、地域の理容業組合という業界組織がカルテル
 として機能していて、価格統制によって同業者間の過当競争を防止
 していましたが、それによってサービスメニューも画一的なものに
 ならざるを得なくなり、QBハウスのような新業態の参入を許す
 結果となりました。

  QBハウスは「10分・千円」という新しいビジネスモデルを
 既成概念で固まった業界に持ち込むことで成功しましたが、この
 「安さ・速さ」による浸透は結局、暇な平日の昼間に顧客を誘導
 するための施策を打たなかった既存業界、繁忙期に1時間待ちと
 いう状況を改善できなかった既存業界 の課題を、新規参入者が
 容易に実現した結果ということができます。


  ありきたりのマーケティングプロセスでもおろそかにせず、常に
 考えコツコツと実践し続けることが必要とされているのです。

-----------------------------------------------
 アドバンマネジ経営コラム by 大山祐史


  本コラムの内容は、大山祐史によるものであることを明記する
 限りにおいて、引用・転載は自由です。