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 <本日のツボ80>
   『市場シェアはどう計る? 』

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<ツボの説明>

  「市場シェアの獲得」というのはマーケティング目標の大切な要素
 なのですが、その意味合いが年々複雑になってきているようです。

  理由は簡単です。「市場」というものの境界があいまいになっ
 てきているから。


  たとえば、ヤカンというものを例に考えてみましょう。

  日本中の「ヤカン」という商品全体の売上金額が10億円のと
 き、自社のヤカンがそのうちの3億円をしめているならば、その
 会社の日本におけるマーケットシェアは30%です。

  しかし、この30%という数字は、実は「ヤカンという道具を
 使ってお湯を沸かす人」という、限定された市場におけるマーケッ
 トシェアに過ぎないのです。

  実際には、電気ジャーポットに50億円の売上があったとして
 も、通常それはヤカンの市場規模の中には入りません。

  私の知り合いには「お湯は電子レンジで沸かす」という、信じ
 られない一人暮らし生活者がいます。たしかにカップ1杯分くら
 いのお湯なら電子レンジで沸かすこともできてしまいます。

  こうなると、「お湯を沸かすための手段」というマーケットに対し
 て自社製品(ヤカン)のシェアはいかほどか、などということに
 ついては、まったく見当もつかないということになってしまいます。


  アメリカのアムトラック鉄道会社は、鉄道旅客・貨物運輸の分
 野では圧倒的なシェアを誇っていましたが、その業績には長い低
 迷期がありました。

  そのころ、グレイハウンドバスを利用する旅客や、大型トレー
 ラーによって運搬される大量の貨物は、アムトラックにとっては
 市場の外の存在だったのです。

  市場を狭く捉えすぎると、自社製品の市場とは無関係だと思っ
 ていた代替製品・代替サービスに足元をすくわれます。

  本当の市場は「鉄道の利用客」ではなく、「迅速・正確でかつ
 経済的な移動を必要としている人・貨物」だったのです。


  ニッチで勝負する中小企業ならなおさら、自社にとっての市場
 をもう一度見直してみましょう。

  都合よく市場を狭めて測定することにより自社の市場シェアを
 高く見せることはできますが、その数字の上にあぐらをかくのは
 危険です。


  一旦市場の範囲を拡大した後に、再度絞込みを行なうことで、
 既存市場とは違った占有率の高い新市場を発見することが可能に
 なります。」

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 アドバンマネジ経営コラム by 大山祐史


  本コラムの内容は、大山祐史によるものであることを明記する
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