タイトルロゴ大山祐史の経営コラム

 


 <本日のツボ106>
   『心の中は僅差の勝負』

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<ツボの説明>

  人間の感情には姿や形がないので、その全体像をくわしく表現
 することはむずかしい。他人の感情の中身を理解することはもっ
 と難しい。

  せめて自分の感情の中身のことくらいは、ときどき冷静に考え
 て整理してみたい。


  感情の構成要素は実に様々なものがある。

  尊敬・親しみ・喜び・友情・愛情、恨み・嫉妬・怒り・悲しみ
 憎悪、などなど。


  人が意思決定を行なうときには、いろいろな感情を織り交ぜた
 思考を行なった末に、やる・やらない とか 好き・きらい と
 いった判定を下しているわけだが、たいていの場合、心の中の勝
 負というものは僅差の勝負になっているという。

  「大嫌い」という大差の判定を下したつもりでいる場合でも、
 実際の心の中での得点は、嫌い:55点 対 好き:45点くら
 いの差でしかない。

  ほとんどの場合51点対49点くらいの勝負になっていることが
 多いようである。


  けれど、人間というものは、1〜2点差の心の状態をうまく表現
 するのは苦手である。

  したがって結論としては「大好き」か「大嫌い」といったように、
 どちらか一方に偏った表現をしてしまいがちになる。


  昨日までやる気満々だったことに対して、今日はなんだか今ひ
 とつ乗り気にならない。

  とか

  ずーっと大好きだと思っていたものが、ちょっとしたことがきっ
 かけとなって見るのもいやなくらい嫌いになってしまう。

  などといったことは、現実の世の中ではよく起こることである。


  心の中ではいつも僅差で決着がついているわけだから、ほんの
 些細なことを引き金にして180度反対の結論に達するのは、だ
 れにでも簡単におこることなのである。


  私の息子たちもよく「お父さん、大嫌い」というけれど、「そ
 おなの? お父さんはXXくん大好き」と言ってやると、数分後
 には「やっぱり大好き」に変わっていたりする。

  子供も大人も、感情の構造にそれほど大きな違いはない。

  「今日限り出入り禁止だ。お前の会社とは二度と取引しない。」
 といわれても、またもとどおり良好な関係に戻ることはそれほど
 難しいことでは、ない。


  49点で負けたほうの感情に封印をして、力ずくでずーっと押
 さえ込んでおこうとすることはとても苦しいこと。
 
  「自分は意志が強い」と思っていてそのことを誇りに感じている人
 ほど、49点の感情と戦って苦しみを背負い込んでしまいがちになる。
 
  51点の感情も49点の感情も、どちらもその人の本心なのだから、
 それを打ち負かすことで幸せな気持ちになれるというものでは
 ないのだ。

  そんなことをするのは心のエネルギーの浪費であり、精神の健全さ
 を損なう要因となる。

  時々負けたほうの感情にも栄養をあげて、ときには51点の勝者に
 格上げしてあげることが心と身体の健康には良いようである。

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 アドバンマネジ経営コラム by 大山祐史


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