タイトルロゴ大山祐史の経営コラム



   <本日のツボ273>
     『投資と起業』

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<ツボの説明>

  株式会社の場合、組織の階層構造を説明するのに、株主さんの
 ことを「保有層」または「信託層」などといいます。取締役の方々
 のことは「受託層」といいます。

  株主さんは会社の「持ち主」であり、経営を他人に「信託(信じ
 てまかせる)」立場。取締役というのはその「持ち主」に経営を
 頼まれ任された者、ということです。

  ですから、出資者・投資家たる株主と、取締役の責任者(通常は
 代表取締役※)たる経営者とでは、その立場が明確に異なります。

  株式に限らず、出資と経営・運用との間には、必ず信託と受託と
 いう相対する関係が有ります。

  ということなので、「IP電話のサーバーを購入してオーナーに
 なることにより安定収入を得ることができる」というビジネス?の
 オーナーは明らかに信託側であり、経営とは無関係です。

  これを「IP電話サーバーのオーナーとして起業しませんか?」と
 言って勧誘することは完全に詭弁ということができます。

  「起業」という言葉を用いることによって、あたかも自分の資金
 を自分でマネジメントするかのような印象を与える効果を狙った
 のでしょう。こまかいところまで気配りが行き届いた「詐欺の最高
 傑作」といえます。


  巷では「投資」「出資」「運用」などという言葉が飛びかって
 います。今年から急増する定年退職者の退職金を狙って、さまざま
 な立場のものがその資金を集めようとしているのです。

  どのようなものであれ、他人に「信託」された資金の運命はその
 保有者の手を離れ他人にゆだねられます。

  完全に信用できる者にしか信託すべきでないことは当然です。
 出資者自身がその運用の結果に対して責任を負うからです。

  投資や運用を受託する側は、通常「運用手数料」という形で報酬
 を受け取り、運用の結果に対しての責任は負わないことが多い。
  投資信託が値上がりしようが値下がりしようが、金融機関の儲け
 には一切影響がないのです。

  ここが株主・取締役という関係との大きな違いです。同じ受託側
 でも取締役の場合は、「解任」というかたちで運用(経営)結果に
 対する責任を負うことになるからです。

  投資や運用の場合は、その資金の持ち主(出資者)はその運命の
 手綱を手放した上でリスクの大半を負わなければならない という
 ことです。


  「起業」の場合は単純です。自ら出資して経営者となることを
 起業と言うわけですから、持ち主であると同時に受託者でもある
 ということになります。

  リスクの大半を負っていることに変わりはありませんが、その
 運命の手綱は自分の手で握っているわけです。



  ※昨年改正施行された「会社法」では、株式会社の取締役は
   最低1名で良いことになりました(非公開でかつ大企業で
   ない株式会社に限る)。取締役人数が1名の会社は取締役会
   の設置義務はなく、代表取締役も選任する必要がありません。
   したがって今後は、代表取締役のいない株式会社も存在する
   可能性があります(たった一人の取締役が会社の代表者で
   責任者ですから、実質的には代表取締役という肩書きの者が
   いてもいなくても関係有りませんが)。

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 アドバンマネジ経営コラム by 大山祐史


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