タイトルロゴ大山祐史の経営コラム



 <本日のツボ104>
   『10円の部品でも甘く見ない』

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<ツボの説明>

  一個10円で仕入れている部品の束の中に、1個だけ不具合が
 あったとき、その不良部品を受け入れ検査で発見することができ
 れば、それは10円のロスですみます。

  実際には検査の手間がかかっているので、厳密に言えばその不
 良部品にかかったコストは10円以上になりますが、不良品が発
 見されなくても検査にかかる手間は同じであると仮定すれば、不
 良部品1個を発見して排除したときの追加コストは10円です。


  その不良部品が受け入れ検査では見逃されてしまい、生産ライ
 ンに投入されてしまうとどうなるでしょうか?

  不良の内容にもよりますが、穴位置違いや寸法違いといった不
 具合の場合には、組立作業者がその部品を使おうとしてもうまく
 使用することができず、なぜうまくいかないのか、つまり穴の位
 置が違うことや寸法が狂っていることに気がつくまで、作業が中
 断することになります。

  場合によっては、たった1個の部品のせいでライン全体がストッ
 プしてしまうようなこともありえます。

  こういった場合、ちょっとした作業の滞りでも、100円程度
 のロスとなります。

  1時間・人あたりの加工賃が1500円の現場だったとすれば、
 一人の作業者がたったの4分間まごついただけで、100円のロス
 ということになるのです。


  この不良部品が機能部品であり、外観や寸法ではその機能が正
 常か否かがわからないものであったりすると、不良部品はそのま
 ま組み立てられてしまい、完成製品としてその機能をチェックさ
 れるまでわからないということもあり得ます。

  完成品検査で初めて不良であることがわかるということですが、
 こうなるとロスの金額はもっと大きくなります。

  製品を分解して調べ、不具合の原因となっている部品を特定し、
 正常な部品と交換して再度組み立てる といった処置が必要とな
 るからです。

  こうなった場合は数分で処置が完了するというのはむずかしく、
 たいていの場合、無駄に費やされるコストは1000円以上になっ
 てしまいます。


  このあと製品は、自社倉庫から流通業者に出荷されてゆくので
 すが、問屋さん→小売店さん→消費者 という流れを経て物流が
 完結するとしますと、完成品検査の後には自社倉庫を含めて4段
 階のステップが存在することになります。

  何が言いたいのかというと、その各ステップを進むごとに、不
 具合が発生した場合の処理コストはおおむね10倍以上になって
 ゆくということです。

  1000円に0(ゼロ)を4つ付けたらいくらになりますか?


  これは決してオーバーな話ではありません。私の会社でも、私
 が直接担当していたお客さんに不良部品を納入してしまい、全国
 の倉庫から完成品を回収して再度ライン投入し、部品交換して再
 出荷するという処置を行なったことがあります。

  このときに当社が負担したコストは、交換用の部品代金を除い
 ておよそ900万円でした。


  松下電器製石油ファンヒーターの事件は記憶に新しいですが、
 おそらく数十円程度の部品の不具合により、メーカーが負担した
 コストは数億円という規模です。

  人命というお金ではあがなえないものまで失ってしまい、社会
 全体で見た場合の損失はとんでもなく大きいといえます。


  ちなみに製品リコールを行なう場合、まずは新聞広告で告知す
 るのが一般的ですが、全国紙にリコール広告を掲載する場合、一
 誌あたりの広告費は約500万円、5誌に出すと2500万円ほ
 どかかるらしいです。


  長くなりましたが、不良品というのは最も上流で発見すること
 ができれば本当に微々たるコストで処理することができます。

  ところが、次工程に流出させてしまうと、一工程通過するごと
 にだいたい10倍のコストがかかるようになってゆく。

  10円の部品でも、甘い対応でずーっと先まで送り込んでしまった
 場合には、数百万円から数千万円という巨額の処理コストが発生
 する大問題につながる可能性があるわけです。

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 アドバンマネジ経営コラム by 大山祐史


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